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コラム・弁護士

 
   

古典や歴史の教育はなぜ必要か?

高橋 融

2006年12月

弁護士 ・ 高橋 融 教育基本法改正が問題となっているときに、いじめと履修不足が急浮上したが、中でも私が呆れたのは、履修不足の最大の科目が世界史であることである。これは、選抜する大学側も、世界史は教科としての重要度が低いとし、教育する高校側もこれに同調している結果であろう。
  しかし、文系の大学が、なぜ世界史の教育を低く見るのか、これは全く間違っているのではないか、と言うのが私の考えである。これは、理系の大学が数学を軽視するに等しいからである。
  大学に入れば、文系は、社会科学系であれば当然、また文学系であっても世界史の知識なしでは、理解できないことが多いだろう。しかし、高校側としては受験戦争を勝ち抜かなければ意味がないし、世界史は実際には選択科目の一つに過ぎないから、選択しなくても代わりの日本史や地理などより容易に履修可能なもので済ませることができる。だから、これを標的にして、履修不足にしても、卒業させてしまえば、問題にならない限り知らん顔を通せるのである。
  どうやら、根っこは大学側にあり、その受験戦争で受験科目を少なくし、受験生を一人でも多く集めようとすることにあるのか。

  私は、日本の受験システムは、実に罪が深いと思う。
  受験に出ないものは、教育の対象から葬り去られる。この結果、日本の若者の歴史オンチが起きているのではないか。例えば、日本の近現代史、すなわち明治以来日本が世界でどのような役割を果たしてきたかは、日本人の世界認識とこれに基づいて行動して行く上で、不可欠なのに、高校で充分な時間を取って教えられない。まして、昭和年間に入ると教わることはないらしいし、試験に出ない。だから、日本が第2次大戦でアメリカや中国と戦争をしたことさえ、曖昧になるのだ。

  古来、教育とは、歴史と古典を教えるところに原点があった。それが全部正しかったとは思わないが、それでも、古典教育、歴史教育が内外の教育の中で果たした大きな役割は否定できまい。欧米では、ギリシャ、ローマが古典と歴史であり、東洋では中国の歴史解釈が学問の基本であった。そしてそれがそのまま、時代を担う若者の教育であり、政治倫理教育であった。後に、読み書き算盤ももちろん行われたが、これは職業教育であり、寺小屋でさえ、「子曰わく---」であったらしい。この基本を弁えないと、教育は論じられない。「前車の覆るは後車の戒め」を、教えることこそが教育の基本だったのである。

  近頃はやたらに、「美しい」が連発され、それが「国」や「日本語」を修飾する言葉として使われているが、私には「真の」や、「真実の」方がより重要と思われる。美しいというのは大事だが、極めて主観的、感覚的価値であり、ともすれば醜いものは真実でも見ようとせず、事態を直視し、客観的に判断することを避けることにつながるからである。
  まして政治家は、これを絶対に避けなければならない。このたびの政府税制調査会長が不適切同棲で辞任に至った経過と辞任のその日までの安倍発言「見識を生かして、あるべき税制の姿を作っていく、議論していくことによってですね、まとめていただくことによって職責を果たしていただき、責任を果たしてもらいたいと思っています」と辞任の必要はないと強調するのは、キレイゴトで済ませ、真実を見ようとしない美辞麗句の代表格ではないだろうか。
 

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