ニューヨークたより
〜国連自由権規約委員会での報告について |
師岡 康子 |
2008年4月 |
早いもので、昨年8月にニューヨークに着いてからもう8ヶ月が過ぎた。昨年9月に先住民族権利宣言を採択した国連総会を傍聴し、今年2月には国連女性の地位委員会を傍聴したが、3月には国連自由権規約委員会で、日本における外国人と民族的マイノリティの人権問題について報告を行った。
自由権規約とは、1966年に国連で作られた条約で、1976年に発効した。日本は1979年に批准している。この規約の実施を監督するために1977年に設置されたのが自由権規約委員会であり、18人の委員で構成されて、ニューヨークとジュネーブで年に3回会合を開いている。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrc/hrcs92.htm
自由権規約の締約国は、規約に基づいて5年ごとに規約の国内実施状況について報告書を提出し、同委員会による審議を受ける義務をおっている。委員会は政府報告書が提出されると、その報告書について担当する専門部会(委員は非公開)を設置し、審議資料としてNGOからの情報提供を得て、同部会が政府に対する質問リストを作成する。その質問リストに対し各国政府が委員会会期中の本会議において回答し、委員会での議論を経て、各国政府の報告書に対する意見書が最終的に委員会で採択される、という流れになる。
今回日本は2006年12月にほぼ10年ぶりに第5回報告書を提出した。同委員会は、今回のニューヨークにおける第92回会期(3月17日〜4月4日)において、日本政府報告書に対する質問リストを採択することを発表し、NGOに広く事前の情報提供を呼びかけた。そこで、会議の傍聴と情報提供希望を同委員会事務局に連絡したところ、委員に対しNGOレポート配布と口頭での8分間の報告をする機会を得ることができた。
レポート作成はもっぱら日本にいる人たちにお願いし、こちらでは別に口頭用報告書を作成し、また、当日の文書配布・質疑応答・委員への働きかけなどに備え、日本人・アメリカ人大学院生と4人のチームを組んだ。
国連の会議を傍聴ないし参加するには、警戒が厳しい現在、全員写真入りのIDカードを事前に作成しなければならない。今回は当日朝1時間ほどで作成できたが、その前の女性の地位委員会ではそれだけで4時間もかかった。誰も怒りださないのが不思議なほどだった。このIDカードを作ったうえで、さらに、国連の建物に入る前に荷物検査・身体検査があり、これも行列で30分ほどかかるときもある。
会合は会期中の日中、予定時間どおりにはじまった。場所は国連地下1階の200以上の座席がある広めの会議室で、議長席を中心に座席は半円形に設置されている。委員は名札の置かれた自分の席に座り、当日参加したNGOはそのすぐ後ろの開いている座席に座った。委員がみな前を向いているので、委員の表情など反応を見るのはむずかしい。
議長の言語がスペイン語であるため、議事はスペイン語で進められ、スペイン語以外の国連での公用語(英語・中国語・ロシア語・フランス語・アラビア語)は、同時通訳を座席についているイヤホンで聞くようになっている。
事前には他の参加者や発表の順番など知らされていなかったのだが、私たちも含め10組のNGO参加者があった。そのうち7組がチュニジアで、残り2組は南米だった。チュニジア政府報告書に対する審議・意見書採択が今回の会議で行われるので、チュニジアが特に多かったと思われる。チュニジアのNGOの報告は、拷問、女性への暴力など、深刻な人権侵害ばかりだったが、それぞれのNGOが関心あるところについて発表していて、内容が重なるので、残念ながら、途中から、申し訳ないが、またか・・という印象を受けてしまった。委員も途中で何人か席をはずした。この問題はすでに日本のNGOの国際人権活動において指摘されていることではあるが(「ウォッチ!規約人権委員会 どこがずれてる?人権の国際基準と日本の現状」国際人権NGOネットワーク編 日本評論社 1999年)、やはり、NGO相互での調整が重要なことを実感した。私たちは一番最後に指名され、外国人・民族的マイノリティの人権問題にかかわるNGOの全国ネットワークである「外国人人権法連絡会」として発表を行った。質疑応答時間は、10組すべておわってからまとめて設けられ、80分以上もの報告を聞いた後なので、よほど熱心にメモをとって聞かないと、質問は出にくいのではないか、とは思ったが、結局ひとつも質問は出ずに、会議は終了した。質問によって委員の関心を探り、10月の本審議に備えることが獲得目標の一つだったのだが、その点は達成できず、残念だった。なお、レポート配布希望を伝えておいたのだが、当日会議中、議長からも事務局からも配布について一言もなく、このままではせっかく苦心して作ってもらった資料を配布する機会を逸するかもしれないと思い、他のメンバーに頼み、事務局に一言断った上で、会議中に委員の席をまわり、配布してもらった。他のNGOはどこも口頭の発表だけだったが、委員の1人から、口頭だけよりも文書も配布したほうがより効果的、といわれたのでほっとした。
なお、3月31日に日本政府への質問リスト作成のための専門部会会議が開かれることは発表されていた。その後に18人の委員全員による採択がなされるのかと思っていたので、委員会の傍聴を希望したが、委員会は開かれず、非公開の専門部会で決まるとのことで、傍聴はできなかった。また、決定された質問リストをみせてもらえないか頼んだが、4月中に同委員会のHPに載せるからそれを見てほしいとのことであった。
現時点ではまだ質問リストが発表されていないので、私たちの働きかけが効果があったのかどうかはまだわからない。国連での発表ははじめてだったが、継続した取り組みが何より大事であろうし、今回のことを一つの経験として、今後の国際人権活動に生かしていきたい。 |