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コラム・弁護士

 
   

流れの速い時代の中で

高橋 融

2005年2月

弁護士 ・ 高橋 融 この数年、さまざまな変化が速くなった。或いは素速く変わる時代になったとも言える。
  例えば、これまで安定経営と思われた大会社が、あっという間に危機に陥って行ったのを幾つも見てきた。 中には、経営者自体が全く危機感を持たないでいて、突然氷山に乗り上げてタイタニック号のように沈んで行くものまである。油断と言えばそうだが、権威をもったことでエラくなり過ぎて甘言のみを聴いて苦言を避け、 目先のことばかり見て好しとして時流の変化を読もうとせずにいた者が陥っている点で共通性があるように見える。その中で重要なことは経営にコンプライアンスが強く求められて来たことだろう。コンプライアンス経営など何時になったら日本で求められるかと考えていたら、現在これがない経営は、早晩やっていけなくなるだろう。そしてそれは経営だけでなく官庁や政党にまで及んで来ている。良い例が、NHK、各県警で問題となっている捜査協力金、検察庁でさえ問題となっている裏金、官庁の監修料、政治献金や議員秘書給与から選挙の際の電話かけ運動費用まで広範に及んでいる。
  法と倫理の目から、問題を見直すことが強く求められる時代になった。
  法律そのものの世界も、流れは急だ。
  商法や破産法など私達が毎日使っている基本的法律が目まぐるしいほど毎年のように大きく変わり、これまでは数年は買い替えなくとも使えた六法全書も、ここのところ毎年買い替えないと不安であるほどだ。
  私など、新しもの好きだからアップデートしてきたつもりであったが、或る問題に一所懸命取り組んでいるうちに、遅れていることに気づくことが増えた。私が司法試験を受けたうん十年前とは違って法律は圧倒的に増え、世界は複雑になり、グローバル化した。
  いま私の心配は、この時代が昭和初期とダブっているように思えることだ。長期の経済低迷、所得格差が次第に大きくなり、若者が就職難で、なかなか出口が見えない時代。しかも、イラクの戦禍や北朝鮮との軋轢が絶えない。
  1931年(昭和6年)日中戦争が始まって、やがて第二次大戦になだれ込んでいったが、その初めの頃はあれほどの大戦争になるとは誰も思っていなかったはずだ。むしろ、世界では前年の1930年には軍縮会議などが開かれ平和の動きもあったから、それが主流と考えていたはずだ。ところが、それが、あれよあれよと言う間に大戦争になり、日本国民数百万、アジアでは数千万の犠牲者を出した。
  日本人は、欧米で健忘症と言われる。自分がやった戦争を忘れたかという意味である。それよりも私は戦争を初めから知らず、教えられてもいない人が圧倒的になり、考えることも議論もできない時代であることを恐れる。国としてのコンプライアンスは、近現代史をしっかり教えることによってしか図れないように考えるである。
 

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