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コラム・弁護士

 
   

刑事裁判雑感

張 學錬
(チャン ハンニョン)

2005年4月

弁護士 ・ 張 學錬 私は、民事事件も通常の弁護士と同様に、一般民事事件・医療過誤・交通事故・外国人事件・行政事件の依頼を受けているが、刑事事件については、他の多くの弁護士と異なりかなり多数受任している。多くの弁護士が刑事事件をやらないのは、主に2つの理由からだと思われる。
  それは、まず、金にならないということであろう。刑事弁護であるからには、殆どの場合犯罪を犯したから依頼を受け、あるいは国選弁護人として活動することになるが、大多数の被疑者・被告人は金がなく(国選弁護人の事件は被告人に金がないからこそ国選になっているわけだが)、それでいて依頼者自身は、身の回りの全てのことについて手足を縛られているのであるから、そうしたことまで弁護士が引き受けなければならない場面が出てくるわけである。
  次に、やってもやっても徒労に終わる。つまり、無罪を主張しても全く相手にされず、必要な証人すら呼んでもらえないということであろう。私も、無罪の決定的な証拠を提出しようとして、裁判所から「必要がない」といわれたことさえある。率直に言って有罪にするために裁判をしていると言っても過言ではない。
  しかしながら、それでも刑事弁護をやる弁護士がいるのは、それなりにやりがいがあるし、やらなければならないという使命もあってのことであろう(もちろん、低額な報酬でもそれを当て込んで仕事をしている場合もあることは否定しない)。
  ところで、長らく動きのなかった刑事訴訟の場面でも、司法改革のかけ声の下、重要な法改正が相次ぎ、最大のものとして裁判員制度の導入がなされた(施行は昨年5月28日から数えて5年以内の別途定める日ということである)。
  この制度は、ひとり裁判員となる日本国民(外国人は成れない)個々の問題ということだけでなく、弁護士の側にも大きな影響を及ぼす制度であり、大きな懸念がもたれている。
  たとえば、一般の方を缶詰にするため連日開廷するという原則の下では、これまで積極的に刑事裁判をやってきた弁護士が、事実上他の事件(特に民事事件)とのかねあいでできなくなってしまうのではないか。もしそうなれば、相当暇な弁護士か刑事ばかりを専門にやる公設の事務所の弁護士だけが可能になるということになってしまうかも知れない。
  しかし、私の個人的な意見としては、裁判員制度そのものよりもっと重大な改革が完全になおざりにされてしまったと考えている。それは、裁判が間違わないということであり、とりもなおさず調書裁判といわれる警察や検察の取調調書や捜査報告書のみに依拠した裁判(証人尋問などの軽視)の是正ということである。
  刑事裁判をやっていてつくづく感じるが、裁判所ははっきりと警察・検察寄りであり、真実の発見について熱意があるとは言えないし、概して被告人の弁解を真剣に取り上げる意思すら持っていないのが実情である。そして、そうした土壌を作ってきたのが調書裁判なのである。
  刑事裁判は、これまでもどうしようもなくひどい状況であったが、裁判員制度の導入により、これまで以上にひどくなりはしないかと心配している。
 

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