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コラム・弁護士

 
   

猛暑と梅干し

清水 淳子

2018年8月

弁護士 ・ 清水 淳子

今年の夏の暑さは記録を塗り替えるほどの猛暑だった。気象庁のまとめを見ると、全国47地点で7月平均気温の最高記録をたたき出し、6地点は1位タイだったとか。8月も一時(いっとき)涼しかったが概ね暑かったので、同じような記録になりそうな気がする。なので「猛暑だった」ではなく「猛暑だ」が正確か。

話は変わるが、我が家では毎年梅干しを漬けている。お取り寄せする農家さんからは「塩は20%で漬けてください」「それ以下で漬けたらどうなっても知りませんよ」と半分脅しのような注意書きが同封されているのだが、それでも日和って16%で漬けている。1日〜2日で梅酢が上がり、その後は赤シソを入れるまで放置することが多いのだがカビたことはなかった。―――――そう、今年までは。

「例年」が通用しないのが今年の夏だった。梅雨があっという間に終わってしまい、赤シソの準備に出遅れ、「やー、困ったな―」なんてぼやいていたら、見たことのない白い膜が浮かんでいるではないか!?

猛暑と梅干し

もう見るからに危険な状態だ。梅酢の下の梅たちがやさぐれて、「バカヤロー、何ほっといてんだよー!」「膜張っちゃって酸欠だよー」「アブねーじゃねえか!?」「発酵したらどーしてくれるんだよー?」と口々に文句を言っているのが聞こえた。

びっくりして「ごめんよー、ごめんよー」と梅を全部取り出し、水洗いして焼酎で拭き、梅酢は不純物を取り除いて煮沸消毒し、改めてたるに並べて漬けなおした。(早期に発見すればこれで復活する。) 反省してその後は毎日せっせとごきげん伺いするようにして、若干遅くなったが赤シソを漬けたらようやく落ち着いた。関西の方ではシソを使わないらしいけれど、シソを使わない梅干しはカビやすくて大変だろうな、と思う。

そして色づいたかな、というタイミングで土用干し(全然土用ではない日に)。一度グレかかった梅たちなので、今年はヤバいかな―、と心配していたが、干してみると意外にいつもよりいいかも?と思うほどふっくら柔らかく仕上がった。

できたばかりの梅干しは塩味がとんがっているが、生の梅の香りが残っていてフルーティな味だ。これで我が家の熱中症対策も万全!どこかの少年野球チームは大量の麦茶と大量の梅干しをベンチにスタンバイし、選手の熱中症を予防しているというから、やっぱり熱中症に効能があるのだろう。夏バテ解消にもこの「しょっぱい」「すっぱい」梅干しは欠かせない。

そんなこと誰でも知ってるわい、と突っ込まれそうだけれど、実はこれ、私がこの梅干しをひと粒150円で売ろうとした日にはやや問題になる。

「150円は高いだろう!」―――――いやいや、そういう問題ではない。

問題のモトは、知る人ぞ知る、いや、けっこう知られているか、こないだまで「薬事法」と呼ばれた「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(平成26年の改正からこの呼び名)、略して「医薬品医療機器等法」だ。あんまり略せてない気がするので、ここでは「医○〜☆法」と呼ぶことにする。読み方は自由に読んでもらえればよい。シミズ的には「イーフゲホゲホウ」がお勧めだ。

このイーフゲホゲホウが医薬品、食品について、むやみに効用・効能をうたってはいけないと規制しているのだ。

イーフゲホゲホウ13条は、許可を得た業者しか医薬品を製造してはいけないと定めており、イーフゲホゲホウ14条は許可を得た業者はおクスリを作ることができるけれども、そのおクスリは厚労省の承認を取ったものだけだよ、と言っている。医薬品はは、厚生労働大臣が承認して初めて「クスリ」と認められ、製造販売ができるようになるわけだ。

そしておクスリは承認された効果しか表示してはいけないので、風邪薬を「やせる」と言って売ってはいけないし、目薬を「頭がよくなる」と言って売ってはいけないことになっている(イーフゲホゲホウ66条を受けた厚生省の通達)。

他方食べものは、承認を受けていないので、そもそも効能・効用をうたってはいけないことになる。最近はやりのトクホは、「こういう効果がありました!」と申請して許可をもらっているので、許可をもらった効果だけは表示が許される。ちなみに「効能・効用」を審査して許可を出すのだから当然厚労省だと思っていたら、ナント消費者庁だった。省庁の棲み分けって難しい…。

さぁ、トクホ以外の食べものが、効果効能をうたうのを禁止されていることはガッテンいただけましたでしょうか?(=`∀´)9 納豆は何十種類もあるけれど「動脈硬化を予防」なんて書いてあるものはいっこもないし、炒りゴマ切りゴマで「若返り」なんて書いてあるものも見たことがない。「食べもの」の分際で健康効果があるなんて標榜してはいけないのだ。

というわけで今回のテーマに戻って、梅干しが熱中症対策に有効か、ではなくて、「梅干しは熱中症対策にいいんだぜ」などと言っていいのか?だけれど、今のところ難しそうだ。

なぜなら? それは「食べもの」だから。

「でも『熱中症に』というドリンクはがいっぱいあるんじゃない?」と思ったアナタ、その指摘は正解だ。基本的に食べものは「熱中症に効果的」などと言ってはいけないのだが、ドリンクだけは例外になっている。「熱中症」の3文字が使えるかどうかが売り上げに大きく影響するドリンク製造業者の団体(全国清涼飲料工業会)は、独自にガイドラインを作った。「100ml当たり40〜80mgのナトリウムが入っている飲料を「熱中症対策」と言っていい」とガイドライン(「熱中症対策」表示ガイドライン)を作ったうえで、「こんなんでいいでしょうか?」と厚労省にお伺いを立てた。越後屋とお代官のような構図だ。厚労省は「うむうむ、かわゆい奴」と言ったか言わないか知らないが、「清涼飲料業界ではこんなガイドラインでやってるから、よきに計らえ」と食品表示の取り締まりをしている全国自治体の担当部署にそのまま転送したので、取り締まりの対象から外れて一件落着となった次第だ。

なので、もし梅干しの全国組織があって、同じようにガイドラインを作って、厚労省にお役人に「よきに計らえ」と言ってもらえれば、梅干しも「熱中症対策にこの一粒!」と言って華々しく販売することができるようになるはずだ。

ま、そんなこと言わなくても、みんな関係なく梅干しは買うか。余計なお世話でした。

あ、なお、売るのでなければ「こいつは熱中症にいいよ」とか「頭がよくなるんだぜ」とか「1日1個でむちゃくちゃモテるようになる」とか、好きホーダイ言ってもイーフゲホゲホウ違反にはなりません。 みなさん元気に夏を乗り切りましょう!

 

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