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コラム・弁護士

 
   

ミカン・オブ・メタモルフォーゼ

清水 淳子

2019年12月

弁護士 ・ 清水 淳子

ITが進化して、金融も難しくなって、iPS細胞だのオプジーボだのと医療分野も著しく進歩している。その陰でしっかりおなじみの野菜や果物も品種改良が進んでいる。

大根もごぼうもニンジンもえぐみがなくなって甘みすら感じるし、山芋やレンコンは皮をむいて放置しても黒くならない。カボチャもサツマイモも甘いし、ジャガイモなんかも土臭さを感じることがなくなった。

果物だってそうだ。いちごは限りなく酸味が少なくなって、びっくりするほど甘い。

リンゴも然り。酸味と甘みのバランスに加えてみずみずしさやシャキシャキ感も楽しめて全方位的な改良が加えられている。

そんな「口当たりがよくなりました」レースにしっかり乗っかっているのが日本の誇る国民的果物 ミカンだ(もともとは中国から来たなんてヤジはこの際ムシですよ、ムシ)。

こたつでミカン

冬の団らんの代名詞だ。

たとえ洋間が増えてこたつが日本の家屋から消えても、日本の団らんからミカンはなくならないだろう。

シミズが小さい頃にもやはりこたつにはミカンが乗っていた。お茶代わりにミカンを食べていた気がする。シミズのきょうだいはある日顔や手足がすっかり黄色くなり、「大変だ!」と病院に連れて行かれた。お医者さんからは「どこも悪くない。ミカンの食べ過ぎです。」と言われて帰ってきた。ミカンを毎日1キロずつ食べると身体が黄色くなるというウワサは本当だ。

※個人的な経験です。すべての人が黄色くなることを保証するものではありません。

さて、そんな日本の冬にア・プリオリな存在であるミカンも、イチゴやリンゴに負けない進化を遂げている。

10年前のシミズは、紀伊国屋文左衛門が江戸に運んできたミカンと、イトーヨーカドーからうちに買ってきたミカンと、そう違わないと思っていた。

「しょせんミカンだしねー。苗を植えてから実がなるまで何年もかかるし、ミカン同士交配したところで10年後に生るのはやっぱミカンでしょ?」

くらいナメた考えでいた。

ところが、忘れもしない10年くらい前の11月ころのことだった(すっかり忘れている)。ひょんなことから愛媛県は宇和島のミカンを食べる機会があって、そのあまりの甘さと甘皮の薄さとジューシー・プルプルの果肉に衝撃を受けたΣ(= ̄∇ ̄=ノノ!

愛媛の人はこんなパティシエの作ったゼリーみたいなミカンをデフォルトで食べているのか!?と愛媛県民を心からうらやましく思ったものだ。

以来、一言でミカンといっても産地や収穫時期が違えば味も食感も違うことを心に刻み、一房入魂(「イッポウニュウコン」と読んでくれ)でミカンを食べてきた(本当は皮をむいたらほぼ2口で食べ終わる)。

そして、ミカン本家(この場合温州ミカン)の進化のみならず、ミカンは着々と分家を擁立して繁栄を謳歌している。

20年前にスウィーティ(オロブロンコ)を食べたときの衝撃は忘れられない。

「果物なのに緑」というオキテ破りな外見から想像もつかないさわやかな甘さは昭和生まれのシミズを驚愕させた。

スウィーティは外国産だったが国産の新種は味・種類ともビックリするほどだ。甘夏やいよかんあたり割と昔からの分家だが、清見オレンジやポンカン、はるみにはるかなんて親戚の女の子みたいな名前の新種もあって、国産柑橘類もまさに百花繚乱だ。

そしてあまりに種類が多くて見た目も名前も似たようなミカンがたくさん出ているため、明らかにデカい文旦とミカン、グレープフルーツ以外はほとんど区別がつかない。

※ちなみにシミズの最近のお気に入り「はるか」ちゃんは、サイズは少し大きめのミカン、色は黄色、皮の少しゴツゴツした感じはいよかん似で、好きなだけあって区別がつく。酸味が少なくてさわやかな甘さでおいしいぞー。

そして、売り場に名前が書いてあっても、なじみのない種類だとどんな味だか分からず、見た目の印象だけで買ってきて「あら、甘いわ」とか「こんなに皮が固いのか―」とかビックリすることになる。

さて、ミカンの類は産地だけでなくよくそこらへんの庭木にもなっている。シミズの家の周りにも、夏みかんだかゆずだか、黄色やオレンジの、ミカンだかなんだか分からない柑橘類が生っている木があちこちのお庭に点在する。

「これはゆず」「こっちはミカン」と教えていただいた木は、「あぁ、今年もゆずがたくさん生っているなー」などと思うのだけれど、そうでもない限り、「それ」が何なのかさっぱり分からないことになる。

うちの近所に春先から黄色いゴツゴツした実が生っている木があり、「これは何の実なのだろう?」と考えるけれども、そもそもミカンの生態を知らないので、一向に答えが出てこない。「甘いのかなー?」「おいしいのかなー?」「何に似た味なのかなー?」などと通るたびに想像するのも散歩の楽しみだ。

その日も「今日も生ってるなー」と黄色い実を眺めながら歩いていたシミズは、あわよくばどんな匂いか嗅いでみようと庭に近づいて木に鼻を近づけた。すると、その日ちょうど庭に出て庭木の手入れをなさっていたご主人が、黄色い実の木に近づく不穏な野生動物の気配を察知したのか、バッチリ目があってしまった!!!

ヤバイ!猟銃で退治される!

そうでなければ「害獣発見」と保健所に電話される!

そうでもなかったら「不審者」と警察に連絡される!

マズイー!!!

逃げようにも固まってしまって動けないシミズの動揺を察知したのか、庭のご主人はクスリと笑うと黄色い実をひとつ手に取り、ハサミで切ってシミズにくれた。まさしく神対応!

後光すら感じる田山涼成さんとなべおさみさんを足して2で割ったような「いい人」感満載のご主人は、黄色い実を渡しながら言った。

「〇@□※#ると×△&◇¥よ」

方言ではない(たぶん)。東京都下の標準的な言葉なはずなのだけれど、耳が悪くてなんと言ったのかさっぱり分からない。

でもニッコリ笑って通りすがりの不審者にお裾分けしてくれて、食べ方まで(たぶん)教えてくれた親切なご主人に、「分っかんねーっす」みたいな態度は取れない。そんな態度取ったら確実に長谷川平蔵にシバき倒される。

それに、NHKアナウンサーを100、民放アナウンサーを90、俳優さん女優さんを50〜90とすると、聞き取りやすさ5くらいだった「〇@□※#ると×△&◇¥よ」を思うと、もう一回言ってもらっても絶対分からない確信があった。

そしてシミズは満面に笑顔を作って「ありがとうございまーす♪」と黄色い実を押し戴いてもらって帰ってきた。

もぎたてのその黄色い実は、柑橘的な香りは少なくて、椿の木のような香りがした。葉の厚い常緑樹はみんなこんな香りなのかも。

思いがけない親切に遭って、黄色い実を手に軽くスキップ状態でお散歩から帰ってきた。

さて、家に帰って神棚に備えたつもりでつるっと洗い、テーブルに乗せた黄色い実と対峙する。

「〇@□※#ると」

は何だったのか?

ゆで(ると) ミカンをゆでる…若干まずそう。

炒め(ると) 中華料理とかにあるかもしれないが、その勇気はない。

揚げ(ると) むむむ、ミカンの天ぷら?ミカンの香りが移った油は確実に使い道がない。

焼(くと) ミカンはそういう食べ方する地方もあるらしいよね。囲炉裏がないからボツ。

湯むきす(ると)懐石料理か!そのままむけばいいでしょ。

凍らせ(ると) 昔懐かし冷凍ミカン!でもただでさえ硬いのに凍らせると歯が立たないだろうな。

千切りにす(ると) どんな柑橘類じゃ?聞いたことないわい。

かつら剥きにす(ると) それは大根じゃろが?

フランベす(ると) わーい、資生堂パーラーだー。でもあのご主人がフランベするとは思えない。

とりあえず間違いのないのは「そのまま」だろうと思って(考えるのもやってみるのも面倒になった、というのがホントのところ)、その正体不明な黄色い実にナイフを入れた。

予想通り硬い。

なかなか刃が入らない。カボチャのようだ。ただ、ゆずのようなとても良い香りがする。

突きさすようにしてナイフを入れ、削り取るようにして皮をむくと、じょうのうがこれまた若干硬め。不審な野生動物から実を守っているんだろうな。むむむ、負けるもんかー。

じょうのうもナイフで切れ目を入れてむくと、硬いけれどみずみずしい夏みかんのような実が出てきた。いよいよだー。シミズはゆずのような香りのその「黄色い実」を口に入れた。

苦すっぱーい…(○ ̄〜 ̄○;)

すっぱいのは想定内だけれど、想像を軽く超える結構な苦み。まったく甘みのない夏みかんを外皮ごと食べたような感じ(やったことないけど)。ワサビをてんこ盛り大さじで食べたようなガツンとくる衝撃にしばし固まり、やさしい田山おさみさんの顔を思い浮かべながらほとんど噛まずに飲み込んだ。

ただ、ゾウリムシ並みの脳細胞しか持ち合わせていないシミズは、喉元を過ぎると、口に入れた瞬間の刺激の記憶しか残らない。そうすると辛い物好きがせき込みながら激辛スナックを食べてしまうのと一緒で、「もう1個食べてみようかな?」と手を伸ばすことになる(味を記憶しておけ!)。

そうして「うが―――――――――――っ( ̄□ ̄;)!!!」と「もひとつ食べてみようかな(  ̄− ̄)」を繰り返し、結局黄色い実1個をまるごと平らげてしまった。

食べ終わると「うがーっ( ̄□ ̄;)!!!」の部分はすっかり忘れ、ゆずのような香りと幸せな気分だけが残った。

要するにモノ覚えが悪いということなんだな。

未だにあの黄色い実が何だったのか分からない。ミカンの玄孫なのかもしれないし、ゆずの突然変異だったかもしれない。「うがーっ( ̄□ ̄;)!!!」となるけれど、幸せの黄色い実だ。

ただ、もしあのお庭でご主人にまた会ったら、「おいしかったですー」と宣言だけしておこう。だって、「何の実なんですか?」なんて聞いても、返ってくる答えは分かっている。

「〜〇@△♯:☆?だよ」

 

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