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コラム・弁護士

 
   

DV夫という「奇妙な生物」

穂積剛

2012年6月


弁護士 ・ 穂積 剛

この国で多くの人達は普通の日常生活を送っていて、その人が属する社会的なグループというのはそれが仕事関係であれ趣味や友人関係であれ、おおよそ同じような感性の人たちが集まった集団なのが普通です。もちろんこの国にも暴力団構成員とか、詐欺師集団とか、社会的モラルの見地から相当異なった感性を有する人たちもいますが、普通の人たちはそうした類の方々と日常的に接することはありません。つまり多くの人たちは、職場であれ家族であれ友人関係であれ、自分と同じような感性を持ち、常識的で善人で、ことさらに嘘をついたり人を騙したりすることなどあり得ない人たちに囲まれて生活しています。そのため、自分が善人であるのと同じ程度に、相手も善人なのだと信頼して社会生活を送っているのが実情です。

私は弁護士ですから、普通のサラリーマンなどが日常生活で接しているよりは遙かに、こうした「モラル」の欠如しがちな世界の方々と接する機会は多いと思います。それでも、社会的にノーマルな階層に属している人たちと接するときには、多くの人たちと同様に、「自分が善人であるのと同じ程度に、相手も善人」だと信頼して社会生活を送っています。

ところがあるとき、気が付いたのでした。

社会的には自分たちと同じようなノーマルな社会集団に属しているのに、普通の人たちとは全く異なる異常な価値観を有する人たちが、少数だけれども確実に存在していることに。そういう人たちは、社会的には一見ノーマルな生活をしているように見えながら、実際には平気で嘘をついたり人を騙したり物事を誤魔化したりすることができるということに。それはあたかも、外見的には自分と同様に人間の姿をしていながら、その正体は宇宙から飛来したエイリアンであり、内面は全く異なる「生物」なのに、人間の振りをして人間社会に浸透しているかのようでした。それが、「DV夫」という奇妙な生物だったのです。

もともと私は労働弁護士の端くれで、労働事件においては会社側に「平気で嘘をつく人々」を何度か見てきました。これは、日本が強固な農耕社会であり、社会集団の中では逸脱しないよう個を殺して周囲に同調しようとする傾向が非常に強いためで、それなりに理解できるものではありました。要するに、「周囲に自分を同調させるため、ウソをつく」ということです。

労働弁護士の端くれのはずが、自分の意には反してどういう訳か離婚事件ばかりが多くなってしまい、今では労働事件より遙かに多い件数の離婚事件を担当することになりました。しかもそのほとんどが、程度の差はあれ夫のDVに苦しめられ逃げてきたという妻の側の事件ばかりになっています。そうした事件を手がける中で、「DV夫」とされる類型の人たちと接触をもつようになっていきました。

この手の事件を担当していくなかで、私は奇妙な疑問に捕らわれていくようになりました。DV夫が妻に対して行ってきた行為について、妻の証言もあり、それを指し示す証拠類もあって、妻から聞き取った経緯もスジが通っていて不自然なところがな い。そういう場合には妻の証言が事実に近いものといえ、判決でも主張どおりの認定を得られることがほとんどです。

そのこと自体はいいのですが、私がどうにもわからないと思ったのは、「このDV夫は、そもそもどうしてこんなことをしていたのか?」という根本的疑問についてでした。その思考回路がどうにも理解できなかったのです。ここでのDV夫というの は、一番わかりやすいのは物理的暴力を振るう夫のことですが、それに限りません。暴力を振るわずとも、普段からの言葉や態度、行動などによってDV夫は行動します。

DV夫の実態というのがどういうものなのか、その一例を示しましょう。『DV・虐待加害者の実体を知る』(明石書店、2008年)という書籍からです。

「水曜日の夜、父親と母親と子供たちが夕飯を食べています。父親は食事中イライラしながら家族全員を非難し、まるで電気のようにピリピリした気分を周囲に撒き散らしています。自分が食べ終わると突然食卓を去り部屋を出ようとしたので、10歳の娘が『お父さん、どこへ行くの? 水曜日はお父さんがお皿を洗う日よ』と言いました。すると父親は娘の言葉を聞くなり烈火のごとく怒りだし『子供のくせに偉そうに俺に指図するつもりか! 黙らないと顔めがけて皿が飛んでくるぞ!』と大声で怒鳴り散らしました。そして皿をつかむと娘の顔に投げつけんばかりの振りをして床に叩きつけました。それから手でイスをひっくり返すと、足を踏み鳴らして部屋を出ていってしまいました。母親と子供たちは震えており、女の子はワッと泣き出してしまいました。すると父親が部屋の入口に戻ってきて『黙れ』と怒鳴ったため、女の子は涙を抑えたのですが、そのためにかえって激しく震えだしました。父親は誰にも触れず、家族に痛烈な衝撃を与えたのです。

翌週の水曜日をみてみましょう。前の週の恐ろしい緊張感はなく、夕食はふだん通りすすみました。しかし、父親は自分が食べ終わると部屋からすっと出ていきます。家族は父親が皿洗いする日だということを彼に言うでしょうか。もちろん言いません。…父親の恐ろしい態度は、自分の気が乗らないときはどんなときでも皿洗いをしなくてもいいし、誰もそれをとがめないという状況を作り出してしまうのです。」(190頁)

このような例が、多くの家庭で本当に数多く繰り返されています。こういう言動を現実に行っている例がいかに多いか、事件を担当するなかで私自身が驚かされたほどでした。ただ、どういう思考回路によってこんなことをDV夫がするのか、それが私にはわかりませんでした。

このような実体を裁判所において指摘されたとき、DV夫側の多くの対応は、「そのような事実はない」「知らない」というものです。もっともそうした場合でも、積極的に具体的な反論がなされることはさほど多くなく、否認するだけで後はその話題に可能な限り触れないよう逃げ回る、という例がかなりの割合であります。

ところが逆に、いろいろな理屈や証拠を示して、それがでっち上げだと事実を歪めて主張してくる例がいくつもあります。そうした例は、私の経験上ではDVの程度が相当に進んでしまっているケースです。

けれども多くの場合、その反論が反論の体をなしていないのが特徴で、しかもそのことに主張しているDV夫本人が気付いていないらしいのがこれまた不思議でした。代理人も就いているのだから、主張内容が弱いことに気付いても良さそうなのに、逆に論破できているかのようにDV夫が誤解しているらしいのがまた理解できないところです。

さらに多くの例で理解できないと感じたのは、妻や子供たちの心が完全に離れてしまっていることが客観的に明らかなのに、別れてやっていくことを頑なに拒絶しようとするDV夫たちがいることです。別れることを拒否して妻に嫌がらせを続けたり、別れざるを得ないとしても何らかの形で関与し続けることのできる理由を何とかして残そうとしたりします。中には、完全に離婚したあとにまで元妻に付きまとって、トラブルを起こし続けるDV夫もいます。

普通だったら破綻は明らかで、復縁の可能性は皆無なのだから、あとは財産分与と親権の問題だけ解決して離婚を選択するのが通常の判断だろうと思います。ところがどういう訳か、執拗にそれに抵抗する種類の人たちがおり、これまたDV夫の特徴なのでした。

具体的な現れ方は人によって方向が違ったりはしていますが、複数の事例において、このようにDV夫たちに共通してみられる傾向があることは確かです。けれども私には、どうしてそうなるのかが皆目理解できず、当初は相当戸惑いました。どうしてDV夫という「生物」には、このように共通した奇妙な性癖があるのか。驚くような暴力的行為をして家庭内をメチャクチャにしたり、ところが裁判所では平気でウソをついたり、別れることを強硬に拒絶したりするのか、その思考回路が本当にわからなかったのです。

この不可思議な謎について一定の答えを出してくれたのが、前述した『DV・虐待加害者の実体を知る』という書籍でした。著者はランディ・バンクロフト(LundyBancroft)というカウンセラーで、米国で2000件以上のDVケースに関与してきた実績のある人です。書籍の原題は『Why Does He Do That ? Inside the Minds ofAngry and Controlling Men』というものでした(高橋睦子・中島幸子・山口のり子監訳)。これは著者が膨大な数のDVケースに接することで、DV加害者の実体を描き出した労作です。

これを読んで私は、ようやくDV夫という奇妙な「生物」の考え方が、多少はわかるようになってきました。とても共感はできませんが、彼らがどういう行動に出る可能性があるか、ある程度なら予測することはできるようになりました。

DV夫というのは、常軌を逸して肥大した特権意識と所有意識を有しており、そのために配偶者や家族を支配しコントロールすることに強烈な欲求を有している類の人たちです。彼らは強力な自己中心主義に支配されていて、家庭内において妻や子供は自分に従属すべき対象だと考えています。妻や子供を一つの独立した人格として自己と対等に尊重することをせず、自分が支配して自分に絶対的にしたがうべき相手だとしか認識していないのです。

そうやって相手を自分の思うとおりに支配するため、DV夫は怒鳴ったり怒ってみせたり場合によっては物理的暴力を振るったりします。妻や子供が自分に反抗しないよう従属させておくことが目的なので、乱暴な行為に及ばなくても嫌味を言ったり無視を続けたり文句を言い続けたりといった行為をして、相手を嫌がらせて支配しようとするのもDV夫の常套手段です。

事実を歪めて自分の都合のいいように解釈するのもまた彼らの恒常的手段で、むしろ確信犯的にやっていることだとわかってきました。例えばこの書籍には次のような例が記述されています。

「私のDV加害者プログラムを受けた、身体的暴力を振るうエミールという男性がいました。彼は、妻に対して振るった暴力のうち一番ひどかったものについて次のように話しました。『ある日タニヤが度がすぎることを言ったんです。それで頭にきて首をつかんで壁に吊り上げてやりました』。そして怒りに燃えながらこう続けました。『そしたら僕の股にひざげりをくわせようとしやがったんです! 女にそんなことされたらどんな気持ちになるかわかるでしょう? そりゃもちろん感情的になりますよ。それで首から手を振りほどいたとき、彼女の顔に僕の爪が引っかかって長い切傷がついてしまったんです。あいつにはほんとにあきれますよ』

DV加害者の認識は強い特権意識に影響されているので、攻撃と自己防御を逆にみてしまいます。タニヤは命に関わるようなエミールの攻撃から身を守ろうとしたのですが、エミールはその行動を自分に向けられた暴力だと受け取りました。そしてさらに彼女にケガをさせると、それは彼女からの暴力から身を守ろうとしてやったことだと主張しました。加害者がかけている特権意識という眼鏡のレンズは、まるでスプーンに映る像のようにすべてをあべこべにみせてしまうのです。」

DV夫の認知がどれほど普段から歪んでいるのか、よくわかる事例だと思います。実際にはここに出てくるエミールという男性は、自分が何をやっているのか半ば理解していたはずです。しかし自分の行動を正当化するために自分自身を納得させる必要があるので、こうした歪んだ認知にしがみつこうとするのです。

多くの場合、実は自分の認知が歪んでいることにDV夫は気付いているので、裁判でも事実を否定するだけで後は話題にしようとせず、逃げ切ろうとする例が多くあります。ところがDVの度合いが相当程度進行してしまうと、自分を納得させようとした正当化の論理が逆に正しいものと自分でも思い込んでしまって、ウソをついたり事実を歪めたり詭弁を弄したりすることで、事実自体を積極的に否定しようとし始めます。こうなるとかなり重傷のDV夫と成り果てます。

DV夫が、自分から離れようとする妻に極端に固執し、別れることを拒否して嫌がらせを続けたり、別れるにしても何らかの関与を継続しようとするという性癖も、DV夫特有の肥大した所有意識と特権意識によって容易に説明がつきます。DV夫は妻や子供を独立した人格を有する人間としてではなく、自分に従属して支配されるべき自分の所有物としか考えていないからです。

自分が相手を支配して所有していたときは、DV夫は自分の支配欲を満足させることができていました。ところが自分の所有物が自己の権利を主張し始め、自分の意思で行動しようとすることを、支配者としてのDV夫は許容できません。DV夫は妻の自立を許さず、いつまでも自分の支配下に隷属させ続けようとします。そのため可能であればいつまででも、自分の支配力が及ぶような関係を持続させようと必死になるのです。

DV夫のこうした特性がよくわかる例を、少し長いですが同じ書籍から引用しましょう。

「ヴァンの言葉を借りれば、9ヶ月前彼は一緒に暮らしていたゲイルをひどい目に遭わせて危うく殺すところだったそうです。彼は良心の呵責を感じるかのように床に眼を落とし、そのときの虐待についてゆっくり話し始めました。『ひどいものでした。本当にひどかったんです。彼女が生きていたのは不幸中の幸いでした。その晩僕は逮捕され、翌日母と兄が保釈で出してくれるまで拘置所に入っていました。…僕はゲイルにしたことに向き合わなければならないと心を決めました』。しかし、彼は 数ヶ月後、法廷で命じられるまでDV加害者のためのプログラムに参加しませんでした。

数週間、彼は私のグループのスターでした。彼は他のDV加害者たちが、相手の女性にしたことを否定することや相手のせいにすることに対して立ち向かい、自分自身を誠実に反省する必要があると説きました。私は、彼に何度かお酒を虐待の口実にしないで、ゲイルに対する虐待と暴力の過去をもっと真剣に振り返るように促しました。彼は初めはイライラしながら私の話を聞いていましたが、しばらくすると声を和らげて言いました。『僕にはまだしなければならないことがたくさんあるのはわかっています』。こんな調子の彼は、自分を本当に変えるという困難な作業に取り組もうとしているDV加害者男性の一人のようにみえました。

ヴァンとゲイルは9ヶ月前の激しいけんか以来別居していました。ときどき話し合っているようでしたが、一緒に住むことはありませんでした。ヴァンは再びゲイルが自分を信用してくれるまでには相当時間がかかり、彼女から少し離れていなければならないと考えていました。

しかし3、4カ月たつとヴァンが自分が思っているように、ゲイルが自分に対する信用を回復するために離れているのではないことに気づきました。彼女は彼と別れようとしていたのです。彼女が真剣に彼との別れを考えているとわかってから、彼は急に後戻りし始めました。ある日彼は『ゲイルは関係を回復するために、もう一度自分にチャンスをくれるべきだ』と言って私を驚かせました。私は呆然としました。『なぜ自分を殺しかけた人と一緒にいなければいけないのですか? 私が彼女だったら絶対そんなことはしたくないですね』

ヴァンは『わかっているでしょうけど、僕たちの関係で苦しんだのは彼女だけではないんですよ。彼女もずいぶん僕を傷つけたんです』と言いました。私は、それが彼女を殴ったことを少しでも正当化するのかと訊ねました。彼は答えました。『いいえ、正当化なんてしていません。ただ僕がすべて悪くて、彼女がすべて正しいわけではないと言っているのです』

『それで彼女はあなたにもう一度チャンスを与えるべきだと言うのですか。何回殴られたら彼女はあなたに負い目を感じなくてすむのですか』。これにはヴァンも口の中でぶつぶつ言って、頭を軽く振っただけでした。

翌週から私はより多くの時間をヴァンに割きました。というのは、別れのときはDV加害者がとくに破壊的になるからです。前回のプログラムが終わったあと、ヴァンはゲイルから彼との関係は終わり、彼女は他の人と交際を始めるという決定的なことを言われていました。それを考えると、そのとき私たちが彼に影響を与えることがとくに重要だと思われました。彼はまず、ゲイルが目標すらもたない上、自分自身の問題に向き合えないのに比べて、自分がどんなに自分の問題に一生懸命取り組んでいるか話し始めました。私は、ヴァンのような加害者と一緒にいることで、ゲイルの進歩がどんなに妨げられたかを話しました。彼は『僕の方が彼女のまわりにいるダメ男より、彼女にとってずっといいはずだ。あいつらはまだ飲んで騒ぐだけの青二才だ』と言いました。

ヴァンのグループの仲間たちは、彼の逆戻りに驚き彼を立ち直らせようとして次のような指摘をしました。
(1)彼は相当変わったと主張しているが、ゲイルが彼にしたがわなければならないという主張は、彼がまったく変わっていないDV加害者のままだということを証明している。
(2)彼は自分がゲイルにした虐待と暴力をいつの間にか矮小化して、ついには彼女の人生で自分が最も相応しい男だと思い込むようになった。
(3)女性は虐待に遭わずに暮らす権利をもつには、『100%完璧である』必要はないということを受け入れていない。

私はゲイルとの会話から彼女の人生は『目標すらもたない』どころか、当面の第一の目標は、彼が彼女にしたことによる傷を癒すことだと確信していました。彼が『彼女の問題』と非難したのは、彼女が抱えている問題の90%は彼に関することであるということを無視していたからです。私はこの点について沈黙していました。彼のそのときの状態をみるかぎり、彼が彼女の回復の過程をよく理解すればするほど、もっと効果的に回復を妨害する策略を練るのではないかと心配になったからです。

ヴァンは初めのころとは打って変わって、グループの反応を素直に受け入れませんでした。断固として首を振り、バカにしたように唇を曲げていました。遅かれ早かれどの加害者にも起こることですが、私たちにはヴァンの特権意識の核となる部分がみえ始めたのです。しかし、数週間という短い期間で、彼の特権意識を変えることは難しいと考えました。けれども、私たちは最後には彼の内面に触れることを望んでいました。というのは、ヴァンは裁判所で言い渡された保護命令の11カ月のうち、まだ6カ月を残していたからです。

しかし、残念なことに、彼はチャンスを棒に振ってしまいました。その後3週間もたたないうちに彼は、彼の中で怒り狂う特権意識に圧倒され、レストランにいるゲイルに近づき、大勢の前で彼女を『あばずれ』と指さしてののしり立ち去ったのです。彼の言葉による虐待は接近禁止命令違反となり、彼女に対する重大な暴力の執行猶予期間だったので、最低でも6カ月は刑務所で過ごすことになりました。」

この書籍に書かれてあることは、どれも日本での事例ではありません。けれども現に私自身が日々体験している実態と、あまりに内容が酷似していることに正直驚かされました。

この例に出てくるように、DV夫は自分の所有物を手放すことに異常な執着を示してこれを妨害しようとします。そのために、関係修復の可能性がないのに別れることを頑なに拒絶し、いつまでも妻との関係を継続しようとします。何らかの関係が続けられれば、所有物を取り戻す機会につながるかも知れないと考えているからです。離婚したあとにおいても元妻をつけ回すDV夫の例があるのは、この習性がいかに強固なものであるかを非常に良く示しています。

自分の体験とこの書籍によって得られた知見から、私はDV夫という「生物」の奇妙な性癖がずいぶんわかるようになってきました。同じDV夫でも性癖の現れ方はかなり違うところがありますが、しかし所有欲と特権意識という根本のところは共通しているので、その観点からは行動様式というものが予測できるようになるのです。

DV夫から妻が逃れようとするとき、上記の例にようにこれが最も危険なときですが、同時にそれはまさに法律家が関与するときでもあります。DV夫のこうした習性を知って理解しておくことは、妻がDV夫から安全に逃げようとするときにとても必要なことです。

通常、第一に私がやることは、DV夫と妻との直接関係を切断し、私が間に入ることです。なぜなら、DV夫の直接の支配から妻をできるだけ遠ざけておくことが非常に重要だからです。こうした支配の関係を断ち切ることが、DV夫から安全に逃れるための最初の課題です。

労働弁護士のはずだったのに何の因果かわかりませんが、日常生活で普段は気づくことのない奇妙なエイリアン、DV夫と関わるようになってしまいました。こうした「生物」の存在に最初はショックを受けましたが、その習性が今ではかなりわかるようになってきています。この「生物」から安全に脱出するためには方法論が必要です。被害者の方は、くれぐれも方法を間違えないようにご注意下さい。

 

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