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コラム・弁護士

 
   

灼熱の熊谷支部決死の千里行
【その3】

鈴木 周

2012年9月

弁護士 ・ 鈴木 周

熊谷支部の法廷内は明るい色調の木でできており、まるで建て替え時の横浜地裁のようであった。事件は、労働事件で、従業員をクビした会社が原告(債務不存在か?)、労働者が被告となっており、ちょうど原告会社の人事担当者が尋問を受けていた。この担当者は労働関係の訴訟に慣れているのか、立て板に水、といった感じで尋問が流れて行き、反対尋問もなかなかそつなくこなし、まず合格点、と言っていいように思われた。なお、書記官はネクタイ着用だが、裁判官はネクタイなし、時折タオル地のハンカチを出して汗を拭いていたところを見ると、かなりの暑がりなのだろう。弁護士は原告側1人、被告側3人で、いずれもクールビズであり、若い弁護士さんであった。

尋問が一段落し休憩に入ったので、法廷を後にし、庁内を探検したが、夏休みのせいなのか閑散としており、特段見るべきものもなかった。まだ出来たてのせいか、何の使用目的も決まっていない部屋も沢山あった。が、別棟の執行官室の前に行ったとき、女性職員の皆さんが不審の目で中からジッと見ているので、「実は関弁連の取材で」と来意を告げ、情報収集をしたところ、「今日は暑い事は暑いが、熊谷の暑さはこんなものではない。」「歩いて5分のところに郵便局があり、印紙類はそこで買って貰っている。」「まわりにはカレー屋とウドン屋が一軒あるきりなので、職員は大抵仕出しの弁当を取っている。400円程度である。」という有用な情報がもたらされた。

裁判所を出、「この暑い中、5分も歩いて印紙買う、というのも気の毒だな。」などと言いつつ、はす向かいにある熊谷の弁護士会に向かった。表の日蔭部分に温度計を置き、中に入ったら、そこはもうカウンターになっており、女子職員3人と目があった。当たり前だが明らかに警戒の眼差しであったので、ここでも「実は」と来意を告げたところ、おおいに歓迎してくれ、親切に館内を案内してくれた。熊谷の弁護士会は、大きくはないが使いやすそうな小奇麗なビルで、50人規模の会議も可能であるように見受けられた。が、夏休みのせいもあろうが、弁護士も相談者も誰もおらず、会員フロアも会議室も鍵がかけられていた。案内女性によると「熊谷の先生方は近くに事務所があるので、あまり弁護士会は使わない。」ということであった。大きなエアコンがついているのに、会議室の端っこにウチワが沢山入った箱が置いてあるのが、お土地柄をよく表していて印象的であった。

灼熱の熊谷支部決死の千里行【その3】

表に出て温度計を見ると、「ゲゲッ、38度になってるぞ、オイ。暑いはずだ。」ということが確認され、驚くとともに、温度計は壊れていなかったことも確認された。たぶん針が進むのが遅い温度計なのだろう。疑ってスミマセン。

弁護士会からはタクシーで地元のスーパー銭湯「湯楽(ゆら)の里」に移動し、汗を流してサッパリした。山本隊員は生き返った様子で、腰に手を当てて雄々しくコーヒー牛乳を飲んでいた。私は鍛え上げた肉体美を熊谷市民に披露したものの、案の定誰も見向きもしないので、黙って五右衛門風呂でブクブクしていた。ここで背広からポロシャツとジーパンに着替えて再びタクシーに乗り、午後4時30分に「埼玉ひまわり法律事務所」に向かった。ここの加藤純二さんは私の同期(48期)で東京修習で一緒だった人で、山本隊員とも同期同クラスということだ。ご夫人の道子さんも同期の弁護士であり、修習終了後、埼玉での2年のイソ弁修行を経て熊谷で独立開業し、今は西岡隊員と同期(61期)の石井さんも含めて3名で事務所をやっているということであった。加藤さんご夫婦は、直前に連絡したにも関わらず、我々の訪問目的におおいに賛同してくれ、取材のほか宴会の手配までしてくれるという誠に親切な方なのであった。

事務所は道子さんのご実家を改装したもので、1階が事務所、2階が自宅となっている。裁判所から歩いて5分程度と大変な好立地だが、別段先代が法曹関係者であったわけでもなく、偶然そこに実家があったとのことであった。今ではとても考えられないが、道子さんが小さい頃は、被告人が紐で繋がれて検察庁から裁判所に行進する様子が見られたとのことだった。

埼玉弁護士会熊谷支部は、現在弁護士さんが63名、加藤さんの開業当時からは倍になったが、「まだ仕事や就職口がなくて困っている、という人はいない。」とのことであり、また「業務は熊谷支部が殆どで、たまに本庁が混じるが、本庁に行くよりは新幹線で東京地裁に行った方がよっぽど早い。」ということであった。さらに、「熊谷は刑事事件が多く、検察官は繁忙になってしまうので、赴任を嫌がることで有名である。」という興味深い話も聞かれた。

取材はほどほどにして事務所を出、途中、老舗デパート「八木橋」にある、有名な「あついぞ熊谷!」の看板の前で記念撮影をし、風流な星川沿いを割烹「磯野」に向かって歩いた。もともと街道の宿場町であったことから、立ち並ぶ商店にもそれぞれ歴史を感じ、楽しい道中であった。夕方になって少し風が出てきたものの、まさに熱風でちっとも涼しくなく、単に暑い空気が移動しているというだけであった。加藤氏いわく、「東京のヒートアイランドの熱気と、秩父山地からのフェーン現象のダブル効果でこうなるのだ。しかし、盆地であるので夜は東京よりずっと涼しい。」とのことであった。が、私は、「そんなことはない。絶対にこっちの方が暑い。」と心の中で言い、後ろをみたところ、やはりサッパリしたはずの山本・西岡両隊員も汗ダラダラ状態となっていた。

割烹「磯野」は、民家風というか、単なる住宅のようであった。「磯野」との表札があるが、知らなければ「ここに磯野さんが住んでいるんだなあ」としか思われない外観であった。しかし、料理は本格派で、どれも美味しく、お作りも新鮮で驚いた。最後にはハモのしゃぶしゃぶまで出て来た。さすが地元の有名弁護士、「高くてまずい店しかない」と言っていた長さんとは大違い、良い店を知っているなあ、と思った。

宴会ではやはり熊谷の暑さについて話題となったが、予想通り、熊谷市民は暑いという事に対して誇りとプライドを持っていて、積極的にそれを受容し楽しもう、という意識が強いということであった。前週、37度まで上がった土曜日には、「熊谷バーニングマンレース」(燃える男レース、ということですね)という大会が開催され、ご夫妻でリレーマラソンに出場し、見事完走したそうだ。よその人間から見ると、「なんでそんな人が死にかねないような無茶な企画を考えるのか?」と理解に苦しむが、そこはやはり日本一の矜持というものなのであろう。ベクトルは全く逆だが「伊達の薄着」みたいなもんだろうか。ちなみにレースでは救急車で運ばれた人がいたそうだ。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、午後7時半、お別れの時間となった。加藤夫妻と石井さんは駅まで送ってくれ、名残惜しさに隊員一同ちぎれるほど手を振って別れた。帰りの新幹線内では、わざわざご夫妻が取り寄せてくれた名物のフライ(お好み焼き風の食べ物。小麦粉を薄く焼いてソースを塗り、切イカや豚肉を乗せ、二つ折りにしたもの。ずっしりと重い。お店によっては「ふらい」と書く。)を食べつつさらに酒を飲んだ。フライは、実に素朴な食べ物で、一口二口食べただけでは「なんだかよく分からぬ」という感想しか出てこないが、食べ進むうちに次第に愛着が湧いてきて、最終的には一同「味がちょっと薄いが、これはこれでなかなか美味しいものだ。」と言い合ったのだった。フライは女工さんが仕事の合間にパパッと栄養補給するために作られたというから、マヨやオカカなんか載せず、飽きの来ないシンプルな味付けの方が向くのだろう。

 

以上が、渾身の灼熱熊谷レポートである。

加藤夫妻が親切にしてくれたこともあるが、支部めぐりは大変楽しいことが良く分かった。クセになってしまいそうだ。「もうやめろ、紙面が勿体ない」との声がなければ、次回は、「調布からJALで行く(プロペラ機)! 八丈島支部」というのをやってみたい。傍聴後、民宿に泊まってクサヤで一杯、というのも楽しそうだと思いませんか?

〜 END 〜

 

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