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コラム・弁護士

 
   

由美ちゃんはパパといたいのに、なんでママの方に行くの?

後藤 富士子

2013年3月

弁護士 ・ 後藤 富士子

由美ちゃんが2歳のとき、パパとママが取っ組み合いの喧嘩をして離婚してしまった。由美ちゃんは、ママに引き取られて、隣町のママの実家で暮らすようになった。

半年もすると、ママが交通事故で大怪我をし、3ヶ月も入院した。ママが入院中、由美ちゃんはパパのもとに戻った。ママが退院すると、パパは、ママの実家の近くにアパートを借りて、由美ちゃんやママを援けた。こうして、1年後には、パパが借りたアパートで3人で暮らすようになった。パパとママは離婚したままで2年半が過ぎ、またパパとママが喧嘩して、ママが1人で実家に戻ってしまった。翌年4月には、パパのアパートの近くのA小学校に入学することになっていて、校門の花壇には新1年生がチューリップを植えていた。

でも、ママは、由美ちゃんの親権者だから、家裁に由美ちゃんの引渡しを求める審判・保全処分の申し立てをした。家裁調査官は、由美ちゃんがA小学校に入学する前にママに引渡せばB小学校に入学して転校しなくてもすむからとの意見を述べ、裁判官は、3月に引渡しの本案審判と保全処分をした。パパのアパートに執行官が来て、由美ちゃんの引渡しを求めたが、由美ちゃんはパパの友達の家に行っていて留守だったから、執行不能になった。そうしたら、ママは、地方裁判所に人身保護請求の申立てをした。人身保護法の手続は、違法な拘束から人身の自由を回復させるための特殊な手続で、パパが由美ちゃんを違法に拘束しているというわけである。

由美ちゃんは、保全処分の強制執行が行われたことで、パパと引き離されるおそれから「分離不安障害」になってしまった。それで、人身保護請求事件の裁判長は、とりあえず由美ちゃんはパパと暮らしながらママの実家のあるB小学校に入学する、由美ちゃんを徐々にママの実家に馴染ませるようにして最終的にはママに引渡す方向の和解を試みたが、ママが拒否したので、審問手続になった。まず、「人身保護命令」というのが発せられ、パパは、審問期日に由美ちゃんを法廷に連れて行かないと勾留される羽目になる。また、被拘束者である由美ちゃんには、裁判所が選任した国選代理人がつく。でも、小学1年生では「判断能力がない」とされて、由美ちゃんのいうことをまともに聞いてくれない。家裁調査官と同じように、由美ちゃんの気持よりも、大人が考える「子の福祉」の見地から裁判所に意見を述べる。由美ちゃんは、国選代理人を信用せず、悲嘆に暮れていた。

由美ちゃんは、B小学校には知っている子が1人もいないうえ、毎日パパやおばあちゃんが送迎しているため、6月になると「いじめ」に遭うようになって不登校になった。
由美ちゃんとパパは、必死になって、学童の保護者やお友達に裁判長宛にお手紙を書いてもらった。「由美ちゃんはパパといたいのに、なんでママの方に行くの?」というのは、1年生のお友達のもの。これに、大人はどう答えることができるのかしら?

夏休みが終わり、9月の初めに審問期日が開かれた。由美ちゃんは、パパに抱き着いて離れず、裁判長は手続を進められないからといって、由美ちゃんとパパを法廷から別の部屋に待機させることにした。由美ちゃんとパパがいない法廷で、形式的に審問手続が行われ、一旦休廷して、由美ちゃんとパパを法廷に呼び戻した。再開したところで、裁判長は「被拘束者を釈放し、請求者に引渡す」旨の判決を言渡し、パパに「引き渡してください」と言った。でも、パパは由美ちゃんを抱えないようにしていたけど、由美ちゃんはパパの首にしがみついて離れないので、パパは「引き渡す」ことができない。すると、裁判長はママに「とってください」とモノを引き取るような言い方で促した。ママとママの弁護士は嬉しそうに由美ちゃんを捕ろうとしたけど、由美ちゃんは「帰ってよー」と2、3回叫んで拒絶した。ママは、由美ちゃんの後ろに回って脇をくすぐるようなことを数回したところ、由美ちゃんに「やめてよー」と言って手を払いのけられてしまった。どうなることかと暗澹としていると、唐突に裁判長が「判決を言渡しましたから閉廷します」と宣言して裁判官3人が退廷してしまった。由美ちゃんとパパは、裁判所職員に「早く出てください」と促されて、支援に駆けつけてくれた傍聴人とともに裁判所を後にした。

パパは、親権者ではないから、法律からすれば、どんな手続きでも勝ち目はなく、実際、あらゆる裁判で負けてきた。でも、不思議なことに、由美ちゃんは、今でもパパと暮らしている。

というわけで、子どもの親権・監護権をめぐって紛争状態にある当事者の皆さんへのメッセージです。

  1. 親権や監護権を争うのではなく、父母の共同子育てを実現する努力をしましょう。 カリフォルニアの裁判所では「最良の親は両親である」といいますよ。
  2. 親権は子が成人するまでのもの。親子関係は一生です。長いスパンで親子の交流を考えましょう。
  3. 離婚や監護問題の法的紛争に埋没して、自分の人生を見失うことがないようにしましょう。そのためには、判決や審判という権力的解決ではなく、話合いによる平和的解決の努力を尽くすことです。相手方や裁判所に不平不満を言っているだけでは、「合意」は得られませんから、解決できないのです。
    カリフォルニアでは、面会交流や監護問題について紛争がある場合には、裁判所の調停を義務付けています。その心は「当事者の方が、裁判官のような権威のある部外者よりも、自分の人生についてより良い決定ができる」という自己決定権の尊重です。
  4. どんなに幼い子どもでも独立の人格として尊重され、子どもにも「自己決定権」があることを認めましょう。また、親は、「自己決定」ができる人間に子どもを育てましょう。
  5. 夫婦親子という「家族」は、日本国憲法第24条を指針にしたいものです。

離婚が悪いのではありません。でも、どんな離婚をするかは、子どもを含め当事者全員の将来の明暗を分けることになります。「幸せになるための離婚」であってほしいと願わずにはいられません。

 

 

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